東京のファミレスを「予備の仕事場」として使う
外は雨、時刻は午後二時。三軒目のカフェにも、店の外まで列ができている。
ファミレスが急に頼もしく見えてくるのは、だいたいこんなときです。
おしゃれな場所ではありません。誰も写真なんて撮りません。ガスト、ジョナサン、デニーズ、ココス、ロイヤルホスト、サイゼリヤ、バーミヤン。写真つきのメニューに卓上のタブレット、それに蛍光灯の明かり。
それでも、テーブルは広く、ベンチ席には深く座れて、空調もちゃんと効いている。時間帯さえ選べば、ゆっくり腰を落ち着けられます。
東京でいちばんいい作業場所は、たいてい誰も取り合っていない場所です。
払っているのはドリンクバー代
料理のことは、いったん置いておきましょう。お金を払っているのは、実はドリンクバーにです。
コーヒーも紅茶もソーダもジュースも、セルフで好きなだけ。値段はカフェのコーヒー一杯とだいたい同じです。
これだけで、一日の出費の計算が変わります。カフェで長居しようとすると、居座っている感じを出さないために何杯か頼み足すことになりがちです。ドリンクバーのある店なら、飲み物代をかさませずに作業を続けられます。食事も頼めば昼ごはんまで済んで、それでもコワーキングのドロップイン一日分より安く収まることが多いんです。ただ、どれくらい居ていいか、パソコンを使っていいかは店舗ごとに違うので、店内の貼り紙は確認してください。
多くのチェーンでは、注文はテーブルのタブレットで完結します。日本語を一言も話さずに、午後をまるごと過ごせるわけです。呼び出しボタンを押さないかぎり、店員さんも寄ってきません。サイゼリヤだけは例外で、店舗によって紙の注文用紙に番号を書くか、テーブルのQRコードを自分のスマホで読み取って注文します。
地味で長いひとり作業には、この組み合わせがなかなか強いんです。
午後二時に入る
いちばん覚えておきたいのは、時間帯です。
お昼の十二時から一時半ごろ、それから夜七時前後。この時間のテーブルは、ごはんを食べに来た人のためのものです。ここにノートパソコンを抱えて入っていくと、さすがに迷惑な客になってしまいます。
午後二時に入れば、いい意味で誰にも気にされません。ランチの客は引けて、夕食まではまだだいぶある。店内の三分の二は空いています。
それに、早朝や夜遅くに使える店舗もあります。その時間帯は、ファミレスの独壇場です。朝早くから夜遅くまで開いている店は多いものの、二十四時間営業はもう例外になりました。ガスト、ジョナサン、バーミヤンを運営するすかいらーくは2020年に全店で24時間営業をやめていて、営業時間は店ごとにまちまちです。夜に作業するつもりなら、行く前に店舗ページで閉店時刻を確かめておきましょう。チームがベルリンやニューヨークにいるなら、夜十一時に暖かくてコーヒーが飲み放題の場所があるのは、かなりありがたいはずです。
難しいマナーはありません。ちゃんと注文する。長くいるなら追加で頼む。人が待っているのに四人席をひとりで占領しない。帰るときはテーブルを片づける。それだけです。
店員さんから何か言われることは、まずありません。だからこそ、自分で空気を読むことが大事です。最近は長時間の利用やパソコンの使用について貼り紙を出している店もあります。見かけたら、試したりせず素直に従いましょう。
お店を選ぶときに見る三つのこと
料理はどの店でもほぼ同じなのに、リモートワーカーが気にするところは店によって本当にバラバラです。
電源。 完全に運次第です。全席にある店もあれば、壁ぎわの四席だけの店も、まったくない店もあります。モバイルバッテリーを持っておけば、もう気にしなくて済みます。
Wi-Fi。 あることは多いけれど、全店ではないし、速いことはめったにありません。あればラッキーくらいに思っておきましょう。大きなファイルを上げる予定があるなら、最初からスマホでテザリングするのが早いです。
騒がしさ。 結局ここが限界になります。家族連れに学生、ずっと続くざわざわした音。事務作業やメール、請求書づくり、こつこつ進める系の作業なら問題ありません。でも、頭の中で扉を閉めて集中したい作業には向きません。
ビデオ会議ははっきり「なし」です。禁止されているからではなく、周りにも自分にも居心地が悪いから。外に出るか、ワークブースを予約しましょう。
都心の外では、唯一の選択肢になることも
山手線の内側なら、ファミレスはいくつもある選択肢のひとつにすぎません。
でも、その外に出ると話が一気に変わります。こだわりのカフェは減り、コワーキングは見当たらなくなる。練馬や足立、中央線を西へ下った駅のあたりでは、テーブルと電源があって、座らせてくれる場所が歩ける範囲にファミレスしかない、ということもよくあります。
何人かで作業するときもそうです。資料を広げられる四人がけのボックス席は、この街では意外と見つかりません。
メインの仕事場ではなく、予備として
ファミレスは、頭をいちばん使う仕事をする場所ではありません。
ほかの場所が使えなくなったときに、仕事の段取りを崩さないでいてくれる場所です。
調子のいい時間はカフェで。本当に静かな場所が必要なら、図書館かコワーキングへ。そしてファミレスは、夜の追い込みや雨の午後、土地勘のない街、ほかがどこもいっぱいの日のために。
どこかに必ず座れる場所がある。そう思えるだけで、この街で働く気楽さはずいぶん変わります。
よくある質問
日本のファミレスでパソコンを使うのは失礼ですか
基本的には問題ありません。きちんと注文して、食事どきの混む時間を避けていれば大丈夫です。ただ、長時間の利用やパソコンの使用を制限する貼り紙を出している店舗もあるので、その場合は従いましょう。
東京のファミレスに無料Wi-Fiはありますか
多くのチェーンにありますが、あるかどうかも速さも店舗によって違います。あればラッキーくらいに考えて、テザリングできる回線を用意しておくと安心です。
どのくらい居ていいものですか
ドリンクバーと食事で数時間なら、ごく普通の使い方です。それより長くなるなら追加で注文するか、場所を変えましょう。お店が混みはじめたら、早めに切り上げるのが無難です。