Work & Stay

東京のファミレスを「予備の仕事場」として使う

明るい窓辺の広いテーブルに置かれたノートパソコンとドリンク。静かな東京の店内

雨で、午後二時で、三軒目のカフェの外にも列ができている。

ファミレスが冗談ではなくなるのは、だいたいこの瞬間です。

おしゃれではありません。誰も写真に撮りません。ガスト、ジョナサン、デニーズ、ココス、ロイヤルホスト、サイゼリヤ、バーミヤン。写真つきのメニュー、卓上のタブレット、蛍光灯。

ただ、広いテーブルがあって、沈み込めるベンチがあって、空調がちゃんと効いていて、そして時計に追われません。

東京でいちばんいい作業場所は、たいてい誰も取り合っていない場所です。

買っているのは料理ではない

料理はこの話の本筋ではありません。買っているのはドリンクバーです。

コーヒー、紅茶、ソーダ、ジュースがセルフサービスで飲み放題。値段はカフェのコーヒー一杯とだいたい同じ。

この一点で、一日の計算が変わります。カフェは、その席にいる正当性を保つために九十分ごとに課金してきます。ファミレスは一回きり。食事を足しても昼食まで片づいて、コワーキングのドロップイン一日分より安く収まることが多い。

注文はテーブルのタブレットで完結するので、日本語を一言も話さずに午後をまるごと過ごせます。呼び出しボタンを押さないかぎり、誰も近づいてきません。

地味で長いひとり作業には、この組み合わせがかなり強い。

午後二時に入る

いちばん役に立つ知識は、店のルールではなく時計のほうです。

正午から一時半、そして夜七時前後。この時間帯のテーブルは、食べに来た人のものです。ここにノートパソコンで現れると、はじめて「困った客」になります。

午後二時に入れば、いい意味で誰の視界にも入りません。ランチははけていて、ディナーはまだ遠く、店内は三分の一しか埋まっていない。

時計の反対側は、ファミレスに競合がいない領域です。朝早くから夜遅くまで、店舗によっては二十四時間。チームがベルリンやニューヨークにいるなら、夜十一時に暖かい部屋とコーヒー飲み放題があるというのは、けっこう大きい。

ここにマナーの教科書は要りません。きちんと注文する。長居するならもう一度注文する。人が待っているときに四人席をひとりで広げない。帰りにテーブルを片づける。

スタッフはまず何も言いません。だからこそ、自分で空気を読む価値があります。最近は長時間利用やパソコンの使用について掲示を出す店舗もあるので、見かけたら試さずにそのまま受け取りましょう。

店舗を決める三つの変数

チェーンは料理については驚くほど均質で、リモートワーカーが気にすることについては驚くほどバラバラです。

電源。 完全にくじ引きです。全席にある店、壁沿いに四席だけの店、まったくない店。モバイルバッテリーを持っていれば、この問いは消えます。

Wi-Fi。 よくありますが全店ではないし、速いことは稀です。あればラッキー程度に考える。大きなファイルを上げる予定があるなら、期待せずにスマホでテザリングしましょう。

騒がしさ。 これが本当の天井です。家族連れ、学生、途切れないざわめき。事務作業、メール、請求、淡々と削る系のタスクには十分。頭の中にドアを閉めたい作業には向きません。

ビデオ会議は明確に「なし」です。禁止だからではなく、周りにも自分にも気まずいから。外に出るか、ワークブースを取るほうが早い。

選択肢ではなくなる場所

山手線の内側なら、ファミレスは数ある選択肢のひとつです。

外に出ると、景色が一気に変わります。こだわり系のカフェは減り、コワーキングは消え、練馬や足立、中央線を西に行った駅のあたりでは、「テーブルと電源があって座らせてもらえる部屋」が徒歩圏にそこしかない、ということが普通に起きます。

複数人のときも同じ。資料を広げられる四人がけのボックス席は、この街では本当に貴重です。

メインの仕事場ではない

ファミレスは、いちばんいい思考をする場所ではありません。

ほかの環境が崩れたときに、全体を持ちこたえさせるものです。

調子のいい時間帯はカフェ。本当に静かさが要るときは図書館かコワーキング。そしてファミレスは、夜の追い込み、雨の午後、土地勘のない街、ほかが全部埋まっている日。

「どこかに必ず席がある」と分かっているだけで、この街で働く感触はずいぶん変わります。

よくある質問

日本のファミレスでパソコンを使うのは失礼ですか

基本的には問題ありません。きちんと注文して、食事のピーク時間を外していれば大丈夫です。ただし店舗によっては長時間利用やパソコン使用を制限する掲示があるので、その場合は従いましょう。

東京のファミレスに無料Wi-Fiはありますか

多くのチェーンで提供されていますが、店舗によって有無も速度も変わります。あればラッキーくらいに考えて、テザリングできる回線を持っておくのが安全です。

どのくらい居ていいものですか

ドリンクバーと食事で数時間なら、まったく普通の使い方です。それを超えるなら追加で注文するか、場所を移す。特に店が混みはじめたら早めに切り上げましょう。