東京の秋に働く:一年でいちばん仕事がはかどる季節の使い方
東京で過ごせる季節がひとつだけなら、秋を選ぶのがいいと思います。
温かいタオルの中で仕事をしているような8月の湿気は、9月の終わりごろにふっと抜けます。カフェが再びドアを開ける。打ち合わせのあいだを歩くことが、いちいち理由づけのいらない選択になる。
これはリモートワーカーにとって、聞こえる以上に大きな話です。
東京の夏は、静かに生産性を削っていきます。エアコンで店を選び、外を歩く時間を計算し、1日に2回シャワーを浴びる。秋はその時間を返してくれます。
東京の夏は「乗り切る」もの。秋は「使う」もの。
問題は、秋が短くて、街が混むことです。少し計画するだけで、心地よい数週間が、一年でいちばん働けるまとまった期間に変わります。
秋は実は二度来る
初秋と晩秋は、同じ名前をつけられた別の季節です。
9月は、照明だけよくなった夏。湿度は高いままのことが多く、台風シーズンの後半でもあります。移動の予定があるなら天気予報は見ておいたほうがいい。
10月半ばから11月下旬が、みんなが「東京の秋」と言うときのあの季節です。空気が乾いて、日中は穏やかで、夜も過ごしやすい。
そこからの切り替わりは速い。12月に入るころには朝が本格的に冷えます。夏の荷物のまま来ていると、それなりに応えます。
実用的にまとめると、外に出る前提の週は10月下旬から11月に置く。そして上着を1枚か2枚買う前提でいる。
働く場所を組み直す
夏は強制的に屋内でした。秋はその制約が外れます。同じカフェ3軒に戻る前に、意識して使い倒す価値があります。
公園のベンチが、読書や書きものの1時間には現実的な選択肢になります。代々木、砧、林試の森、新宿御苑あたりは、平日なら静かな一角が見つかる広さがあります。
8月には使えなかったテラス席も戻ってきます。目黒川沿い、清澄白河、中目黒あたりには、年に2か月ほどしか意味をなさない屋外席を持つカフェがいくつもあります。
屋外で効いてくる制約は、快適さよりバッテリーです。モバイルバッテリーがあれば2時間の屋外ブロックが現実的になりますし、都心の公園なら電波は概ね問題ありません。
ひとつ正直に書いておくと、屋外は読む・書く・考えるには向いていますが、通話には向きません。風の音と人の気配は、あなたの味方をしてくれません。
移動を歩きに変える
都心に滞在しているなら、秋は「ひと駅だけ電車」をやめる季節です。
8月には苦行だった25分の徒歩が、11月には気持ちのいい時間になります。そしてそれは、たぶん後回しにしてきた運動を兼ねてくれる。
歩くことは、東京でのリモートワーク特有の問題もひとつ解いてくれます。
1日が1部屋に圧縮されると、街が視界から消えます。コワーキングとカフェのあいだを歩くだけで、街が視界に戻ってきます。
混雑は本物で、しかも読める
紅葉は国内観光の大きな動機で、その集中は短い期間に起きます。
都心の見ごろは、多くの人が思うより遅く、11月半ばから12月初旬あたりに来ることが多いです。日光や箱根のような山側は、数週間早く色づきます。
有名どころの週末は、はっきり混みます。六義園、明治神宮外苑、昭和記念公園。見る価値はありますし、火曜の朝に見る価値はもっとあります。
これはリモートワークが与えてくれる、いちばんわかりやすい利点のひとつです。
多くの人は平日に行けません。あなたは行ける。そしてその差は、体感としてかなり大きい。
平日がどうしても無理なら、週末の早朝が次善です。庭園の多くは9時前後に開き、最初の1時間は静かです。
宿はとりにくくなる
秋はハイシーズンです。マンスリーやシェアハウス、ホテルを移動しながら暮らしているなら、たとえば2月よりも早く動く必要があります。
10月あたりから料金は上がりやすく、人気の都心エリアは空室が薄くなります。1週間前ではなく4〜6週間前、くらいが目安になりますが、価格の動きは年によって変わります。
11月下旬から12月初旬は、年末の出張シーズンや忘年会シーズンとも重なるので、ホテルの供給はさらに締まります。
効いてくる小さな調整
厚いコート1枚より、重ね着です。東京の秋は、晴れた午後と暗くなってからで体感がかなり変わりますし、屋内の暖房は思ったより早く入ります。
空気は乾きます。11月にのどの調子が悪くなるとしたら、たいていこれが理由です。リモートワーカーが1日を体調に持っていかれる、よくあるきっかけでもあります。
日は急に短くなります。10月から11月にかけて日没が目に見えて早くなるので、自然光で目を覚ますタイプなら、外に出るブロックを前倒ししておくといいです。
季節の食べものは本当においしいので、話のネタではなく生活のリズムに組み込む価値があります。さんま、栗、柿、新米、そして夕方に軽トラックで売られる焼き芋。
季節を人にも使う
秋は、東京のノマドやスタートアップのコミュニティが夏の停滞から動き出す時期でもあります。
ミートアップ、カンファレンス、コミュニティイベントは10月と11月に集まります。「東京で働いている」から「東京に知り合いがいる」へ移りたいと思っていたなら、いちばん労力の少ない窓がここです。
クライアントや協業相手についても同じです。35度の中を10分歩かなくていいだけで、対面のコーヒーはずっと組みやすくなります。
よくある質問
秋に東京にいるなら、どの月がいちばんいいですか?
単月では11月が強いです。乾いていて、穏やかで、晴れが安定します。10月下旬もほぼ同等で、混雑は少し軽めです。
宿はかなり前から押さえるべきですか?
閑散期よりは前から、という答えになります。日本の秋は旅行の繁忙期なので、人気の都心エリアは直前ではなく数週間前を目安にしてください。
屋外でのコワーキングに秋は向いていますか?
ひとりで集中する作業なら向いています。特に10月半ばから11月。ビデオ会議は屋内か、予約したワークブースにしてください。