東京を離れるときのチェックリスト:誰も渡してくれない手順
準備は、出発の2日前ではなく2週間前から始めてほしい。
東京を離れるときにつまずくのは、たいていルールが難しいからではない。準備にかかる日数を知らなかったからだ。
粗大ごみは予約が要る。電気やガス、水道は、連絡してから止まるまでに日がかかる。区役所は、やっと時間ができた土曜日に限って閉まっている。
どれも難しくはない。ただ、やる順番があって、その順番はいざ始めてみるまで見えてこない。
まず、住民登録をしているかどうかを確かめる
やることは、きれいに二つに分かれる。帰国の情報が世の中にいくらあっても使いにくいのは、この分かれ目を無視しているからだ。
短期滞在の入国スタンプで来て、ホテルやマンスリー、シェアハウスに泊まっていたなら、やることはほとんどない。家賃を精算して、自動引き落としを止めて、出発する。それで終わり。
区役所で住民登録をしたなら、話は別だ。あなたは「住民」なので、離れるときには役所の手続きもついてくる。
日本では、住んでいるかどうかは本人の感覚ではなく、登録で決まる。始めたときと同じ窓口で、同じように閉じればいい。
見分け方はかんたん。在留カードを受け取って、到着から14日以内に区役所か市役所で届け出をしたかどうか。したなら、ここから先は自分のこととして読んでほしい。
デジタルノマドビザ(特定活動、最長6か月)で来た人は、前のほうに入る。在留カードは出ないし、住民登録もしないので、区役所で閉じる手続きはない。在留期間のうちにまた戻ってくるつもりなら、再入国許可かみなし再入国で出国すれば、在留資格はそのまま残る。
日本に来たときは、いろいろなものに申し込んだ。離れるときは、その同じリストを逆からたどっていけばいい。
2週間前:待ち時間があるもの
粗大ごみ。
マットレス、デスクチェア、もう持って帰らないスーツケース。ふつうのごみ袋に入らない大きさのものは、たいてい区への事前予約と、コンビニで買う処理券が必要になる。
回収日が1週間以上先になることもある。引っ越しが重なる春と秋はとくにそうだ。予約は荷造りのあとではなく、前に済ませておく。
電気・ガス・水道。
止める日を指定するには、数日前までに連絡するのがふつう。ガスは契約や設備によっては、止めるときに立ち会いが要ることもある。
インターネット。
機器つきの契約なら、ルーターを返すことになる場合が多い。返送用の箱が届くまでにも日数がかかる。
解約の予告期間がある契約。
ジム、コワーキング、携帯電話。どれも解約の予告期間があって、しかもたいていバラバラだ。
1週間前:区役所でまとめて片づける
住民登録をしているなら、ほとんどの手続きは1回行けば済む。準備をして、一度で終わらせよう。
転出届を出して、国外に出ることを届け出る。国民健康保険をやめる手続きも、同じ窓口か隣の窓口でできることが多い。資格確認書が届いているなら、そこで返す。マイナ保険証として使っているマイナンバーカードは返さなくていい。
意外とみんな知らないのが住民税だ。前の年の所得に対してあとから課税される仕組みなので、日本を出たあとにも払う分が残ることがある。
残りがある場合、区役所から一括で払うよう案内されるか、出国後の納税を代わりに引き受ける納税管理人を日本国内で決めるよう求められることがある。
年金も、窓口で聞いておきたい。一定の期間保険料を納めていて、年金を受け取らずに日本を離れる人は、出国後に脱退一時金を請求できる場合がある。ただし期限があるうえ、条件も計算方法もここ数年で変わっている。もらえるものと決めつけず、窓口で確かめてほしい。
持っていくのは、在留カード、資格確認書(あれば)、マイナンバーカードか通知書、それに銀行の口座がわかるもの。
行くなら平日の午前中に。お昼を過ぎると、窓口ははっきり遅くなる。
出発直前:お金と鍵と、細かいもの
銀行口座は、できれば窓口で閉じる。
閉じるのは、最後の家賃や公共料金が「引き落とされる予定」の段階ではなく、「実際に引き落とされた」あと。
空港までの現金は残しておこう。日本もずいぶんキャッシュレスになったけれど、日曜日に口座が閉じていて現金がない、というのはかなり困る。
携帯の解約はいちばん最後に。少なくとも、SMSで認証コードが届く手続きを全部終えてからにする。日本の電話番号は、自分のいろいろなアカウントにログインする鍵になっていることが多い。
SuicaやPASMOは、駅の窓口で払い戻しできるのが一般的だ。手数料が引かれて、デポジットが戻ってくる形が多い。カードの種類によって扱いが違うので、そこは確認しておきたい。訪日客向けのWelcome Suicaはデポジットがなく、残高の払い戻しもできないので、出国前に使い切ろう。数年のうちにまた来そうなら、持ったままにしておくほうが楽かもしれない。
捨てるより、売るか譲る。リサイクルショップは服や小さな家電を引き取ってくれるし、地域の譲り合いグループに出せば、粗大ごみの回収予約よりよほど早く家具がはける。
空港で
日本を完全に離れるなら、在留カードは出国審査のときに返す。
1年以内に戻る予定で、在留資格もまだ有効なら、みなし再入国の制度を使えばカードを持ったまま出国できる。ただし、出国のときに書類の該当欄にチェックを入れて申し出なければならない。
何もチェックしないまま出てしまい、自分の在留資格をうっかり終わらせてしまう。いちばんよくある失敗がこれだ。
空港には1時間多めに着いておく。最後の荷物の発送、窓口の行列、免税品の手続き。その1時間は、だいたいどれかで消える。
2026年11月1日以降に買った免税品は、お店では消費税込みの値段で払い、出国のときに税関で持ち出しの確認を受けてから消費税が戻ってくる仕組みに変わる。確認を受けられるのは、買った日から90日以内の出国のときだけ。買ったものの一部がもう手元にないなら、税関の窓口でそう伝える。
そもそも免税で買えるのは、在留資格が「短期滞在」(と外交・公用)の人だけだ。住民として暮らしていた人も、在留資格が「特定活動」になるデジタルノマドビザの人も、対象には入らない。
住んだ街に、きちんと別れを告げる
用事を何も持たずに、住んでいた街を一度歩いてみてほしい。
上に書いた手続きは、締め切りがあるから放っておいても終わる。でも、注文を覚えてくれている店での最後のコーヒーや、四百回は乗り降りした駅との別れは、予定に入れておかないと来ないまま終わってしまう。
東京を離れる人の多くは、また戻ってくるつもりでいる。
それでも、自分が過ごしたあの東京には、きちんとさよならを言っておいたほうがいい。
よくある質問
どのくらい前から始めればいい?
住民登録をしているなら、2週間あれば余裕がある。契約のない短期滞在なら、2〜3日で本当に足りる。
観光目的の3ヶ月滞在でも区役所に行く必要がある?
ない。住民登録をしていないなら、閉じるものもない。
日本の銀行口座は残せる?
銀行によって方針が違い、海外に住む人の口座には厳しいところも多い。決めつけずに、口座のある支店に直接聞くのがいちばんだ。答えは、日本での在留資格がどれだけ残っているかで変わると思っておいてほしい。