築地と豊洲。早朝の市場をリモートワークの一日に組み込む
朝四時半に目が覚めて、ちょっと困っている。そんな朝でも、東京には行き先があります。
時差ぼけは、ふつうは「直すもの」です。でも西向きの長距離便で着いてから数日は、夜明け前からもうフル稼働している東京の一角に入れる、期間限定のパスにもなります。
ただ、多くの人は行く場所も時間も間違えて、しかも休市日に行ってしまいます。なので、まず地図を広げましょう。
市場は、そこで働く人のために開く。それ以外の人は、その時間割にお邪魔している客です。
市場は二か所あり、別物です

アラームをかける前に、ここだけははっきりさせておきます。
2018年までは、卸売市場もその周りの小さな商店街も、どちらも築地にありました。その後、卸売のほうが水を隔てた豊洲の新しい施設へ移りました。
残ったのが築地場外市場です。もとは業者向けだった店や屋台、小さな食堂が入り組んだ一帯で、いまのお客さんはほとんどが一般の人。いまも健在で、にぎわっていて、ちゃんといい場所です。
移ったのは市場そのもの。パレット、フォークリフト、マグロの競り、長靴姿の仲卸さんたち。それがいまは豊洲にあります。
だから、どちらが上かを比べても意味がありません。どんな朝にしたいかで決めればいい。豊洲はガラス越しに動いている現場を見る場所、築地は歩きながら朝ごはんを食べる場所です。
豊洲。仕事の現場を見たいとき

豊洲市場は江東区の埋立地にあって、最寄りはゆりかもめの市場前駅です。ゆりかもめは新橋から出ていて、有楽町線の豊洲駅から乗り継ぐこともできます。
建物はとにかく大きく、正直、風情はありません。食品衛生のための施設なので、通路と閉め切った窓ばかり。でも、それでいいんです。見学者は売り場に降りず、上の通路から見下ろす形になっています。
いちばんの見どころはマグロの競りです。だいたい五時から六時半ごろと、かなり早い時間に行われます。見方は二通り。誰でもそのまま入れる上の見学通路と、売り場に近い少人数の見学デッキです。デッキのほうは事前申込制で、公式サイトでの抽選になることが多いです。枠が少なく希望者が多いので、間近で見られたらラッキー、くらいに考えておきましょう。
あまり話題にならないのに満足度が高いのが、飲食店街です。市場の建物の中に小さな店が数十軒入っていて、朝五時ごろに開き、昼過ぎにはだいたい閉まります。有名な寿司店は七時前から長い列ができることも。手前の三軒をやり過ごして四軒目に入れば、そこでもちゃんとおいしいです。
隣には豊洲千客万来があります。下の階が食の商店街、上の階が温浴施設という、わりと新しい複合施設です。市場のあとにお風呂に入って昼寝をする火曜日なんて、ちょっとずるいくらい気持ちがいいですよ。
築地。朝食と散歩をしたいとき

場外市場のほうが行きやすく、早起きできる朝が一回しかないならこちらがおすすめです。
日比谷線の築地駅か、大江戸線の築地市場駅で降りたら、あとはぶらぶら歩くだけ。路地の範囲はそれほど広くないので迷う心配はなく、それでいて店が詰まっているので、何度歩いても見落としが出てきます。
その場で包丁を研いでくれる刃物屋、塊のまま量り売りされる鰹節、焼きたてを串に刺して渡してくれる玉子焼き、木箱に並んだうに、お茶屋、漬物屋。それに、朝から海鮮丼を出す店がたくさんあります。
働く人の空気ごと味わいたいなら、六時から八時のあいだに。十時を過ぎると観光客の通りになります。それはそれで楽しいのですが、もう別の場所です。
ここでは、東京のほかの場所より気をつけたい作法がひとつあります。狭い路地を台車が行き来するので、写真を撮るときは立ち止まる前に脇へ寄ること。通路の真ん中で食べ歩きもしないこと。食べ物を売る店の近くには、たいてい立って食べられる場所があります。
市場のあとに仕事できる場所
市場に行ったという思い出だけで終わらせず、一日のいいスタートにするコツです。
どちらの市場も、すぐ近くに腰を落ち着けられる場所があります。
築地からなら、銀座まで北へ歩いて十分ほど。大手のコーヒーチェーンも静かなホテルのラウンジも、ひととおりそろっています。浜離宮恩賜庭園も歩いてすぐ。海沿いの江戸時代の庭園で、池の真ん中に茶屋があります。ただし開園は9時で入園料もかかるので、先に銀座でコーヒーを飲んでおくのがおすすめです。ちゃんとした机が欲しければ、隣の汐留や新橋にいくらでもあります。
豊洲からは、ゆりかもめで2駅戻って豊洲駅へ(歩くと結構かかります)。湾岸の大きな商業施設があって、カフェも座れる場所も電源もそろっています。雰囲気はないけれど快適で、平日の午前中は空いています。湾の眺めは、たぶん自分の部屋の窓よりいいはずです。
どちらに行っても、一日の流れは同じです。しっかり食べて、二キロ歩いて、本物の現場を見て、まだ八時半。そのあとの仕事は、だいたいはかどります。
行く前に休みの日を確かめる
市場の朝が台無しになる原因はたいていこれで、しかも完全に防げます。
どちらの市場も、休みが定期的にあります。日曜と祝日はほぼ休み、水曜も多くは休みですが、どの水曜が休みかは月ごとに変わります。年末年始は何日かまとめて閉まります。
卸売市場は休市日のカレンダーを公式サイトで先まで出していて、確かめるならここです。場外の店は営業日をそれぞれ決めていますが、昔からの習慣で卸売のカレンダーに合わせている店も少なくありません。
前の日に確認しておきましょう。雨の朝六時、閉まった市場の前に立ち尽くすのは、なかなか味わい深いがっかりです。
よくある質問
予約は必要ですか
必要なのは、豊洲の売り場に近いマグロ競りの見学デッキだけです。こちらは事前申込制。上の見学通路も飲食店も、予約なしで入れます。
卸売市場が移ったあとも、築地に行く価値はありますか
あります。場外市場はもともと卸売とは別のもので、卸売が移っても店はなくなっていません。むしろ路地は前より歩きやすくなりました。
何時に行けばいいですか
豊洲の競りなら六時前。豊洲の飲食店で並ぶ時間を短くしたいなら七時前。築地場外は六時から八時がちょうどいい時間です。九時を過ぎても開いていますが、混んでくるぶん、面白さは少し減ります。