高尾山:東京の中にある「半日で登れる山」
山に登りたいけれど、使える時間は午前中だけ。そういうときは高尾山口まで電車で行くのがいい。
高尾山は、まだ東京都内にあります。京王線の西の終点で、新宿からおよそ1時間。特別な装備を用意しなくても、ちゃんと「登った」と感じられる高さがあります。
この組み合わせは案外めずらしいものです。東京から出かける多くの行き先は、週末をまるごと必要とします。高尾山が要求するのは、午前中だけ。
リモートワーカーにとっては、景色よりもここが効きます。7時に出れば、8時半には森の中の登山道にいて、11時前には山頂。午後には机に戻れて、その日はまだ十分に残っています。
平日の朝に効く理由
高尾山の魅力は「絶景だから」ではありません。日本にはもっと劇的な山がいくらでもあります。
効いているのは、気軽に行ける距離にあるということです。1週間前から計画する必要も、予約する必要も、丸一日を空ける必要もありません。
そのぶん、心理的なハードルが下がります。火曜の朝に行ける山は、実際に行く山になる。3時間かかる完璧な週末の山は、たいていリストに載ったまま終わります。
標高の効果もあります。東京の夏は地上がかなり厳しいですが、登山道の森の中は、さっきまで歩いていたアスファルトよりはっきり涼しく感じられます。
いちばんいい旅は、いちばん立派な旅ではなく、繰り返せる旅です。
コースのこと
登山道はいくつかあり、どれを選ぶかは、思われているほど大きな問題ではありません。
1号路は舗装されたメインルート。いちばん人が多く、薬王院を通り、途中に売店や設備があります。
6号路は沢沿いで、ほとんどの区間が木陰の中。未舗装で湿っていることが多く、人混みより森を求めるならこちらが快適です。
稲荷山コースは尾根沿いで、人気ルートの中ではいちばん静か。そのぶんアップダウンが少し増えます。
どのコースでも、ゆっくりめのペースでおおむね90分程度で山頂に着きます。体力や靴、休憩の回数で変わります。
途中まではケーブルカーとリフトもあります。使うのはずるいことではありません。午後の予定が詰まっているなら1時間を節約する合理的な手段ですし、上の駅から山頂までは、それでもきちんとした歩きになります。
持っていくもの、持っていかないもの
舗装路なら普通のスニーカーで問題ありません。
未舗装のコースを歩くなら、グリップのある靴のほうが安心です。とくに雨のあとの沢沿いはよく滑ります。
水は持っていきましょう。山の上にも自動販売機や売店はありますが、メインルートを外れると思ったより少なくなります。
現金も持っていきましょう。小さな売店やお寺ではカードやQR決済が使えないことがあり、ここは「キャッシュレスが静かに効かなくなる」場所です。
本格的な登山装備は不要です。高尾山には必要ありませんし、軽装で軽々と追い抜いていく地元のご年配の方々の横で、少しばかり気恥ずかしくなります。
途中で通り抜けるお寺
登り始めて3分の2ほどのところに、薬王院があります。今も活動している仏教寺院で、1号路はその中を通り抜けていきます。
寄り道でも、登山に付け足された観光地でもありません。道が門をくぐり、像の前を過ぎ、石段を上っていくので、意識していなくてもその中を歩くことになります。
数分だけ、足を止めてみてください。天狗の像があり、線香の匂いがあり、そして自分の脚の状態を確実に教えてくれる石段があります。
6号路や稲荷山コースを選ぶと、登りでは通りません。登りと下りで別のルートを使う理由としては十分でしょう。
山頂と、期待値の話
山頂は開けた広場で、ベンチと小さなビジターセンター、そして西向きの眺めがあります。
空気の澄んだ寒い朝、とくに冬には、西側の展望台から富士山が見えます。夏の霞んだ日には見えませんし、待っていても変わりません。
期待値はそこに合わせておきましょう。眺めは目的ではなくボーナスです。それを理由に来ると、それ以外は素晴らしい朝だったのに、がっかりして終わることになります。
もっと歩きたければ、道は西の城山方面へ、さらに尾根沿いに続いています。ただしそれは半日を丸一日に変える選択なので、山頂でではなく、出発前に決めておくのが賢明です。
時間帯、混雑、季節
高尾山は、来訪者数でいえば世界でもっとも多く登られている山のひとつです。秋の週末のメインルートは、行列のように感じられることもあります。
平日の朝は、まったく別の山です。ここはリモートワークがくれるいちばん大きなアドバンテージで、使わない手はありません。
晩秋は紅葉と、いちばんの混雑。冬は富士山がよく見え、道は冷たく静かです。春は緑が気持ちよく、夏は暑いものの木陰の下ならなんとかなります。森は本当に効きます。
道を静かに楽しみたいなら、8時前の電車を目指してください。
仕事の組み立て方
うまくいきやすい組み立ては、シンプルです。
集中が必要な仕事は前の晩か、電車の中で片づける。京王線の乗車時間は、受信箱を空にするには十分で、電源を必要とするほど長くはありません。
午後は打ち合わせや軽めの作業に充てる。戻ってきたときの状態は「冴えている」より「心地よく疲れている」に近いので、登ったあとの午後3時に深い作業を入れるのは、やや楽観的です。
高尾山口駅の周辺はカフェが限られます。帰りに作業したいなら、登山口ではなく沿線のどこかで降りる前提で計画しておきましょう。
よくある質問
登りはどれくらいかかりますか
ゆっくりめのペースで、多くのコースでおおむね90分ほど。下りはもう少し短くなります。ケーブルカーを使えばかなり短縮できますが、その先の山頂までの歩きはそれなりに歩きごたえがあります。
予約は必要ですか
不要です。登山道に予約の仕組みはなく、ケーブルカーやリフトの切符も当日に買えます。思いつきの朝に向いているのは、このためでもあります。
日本語ができなくても大丈夫ですか
大丈夫です。登山道の案内には英語があり、コース番号もはっきり表示されています。新宿からの電車も分かりやすいです。山の売店での注文は指差しになることもありますが、それはごく普通の光景です。