川越:池袋から30分、半日だけの小江戸
午後が半日だけ空いた。でも、往復2時間も電車に揺られる気分じゃない。そんな日は川越がちょうどいいです。
場所は埼玉県、東京のすぐ北。池袋から速い電車に乗れば30分ほどで着きます。都内の移動のほうが時間がかかることも、珍しくありません。
着いた先には、江戸の面影が残る蔵造りの通りがあります。黒い漆喰の壁に、どっしりした灰色の瓦。そして今も鐘が鳴る、木造の鐘楼。
地元では「小江戸」と呼ばれています。観光向けのキャッチコピーではあるけれど、看板に偽りはありません。
半日で回れるのがいいところ

東京からの日帰り旅は、たいてい丸一日かかります。川越は違います。
午前の打ち合わせを済ませて昼に出れば、町を歩いて、何か食べて、夕食前には東京に戻ってこられます。
仕事の週から一日まるごと抜けなくても、すき間に入れられる。この気軽さが、川越のいちばんいいところです。
それに、町がコンパクトです。古い町並みは歩いて回れる広さなので、ルートをきっちり決めなくても大丈夫。
気の向くままに歩いて、ちょっと迷って、それでもちゃんと面白いところに出る。そんな歩き方ができます。
東京を出る旅でいちばんいいのは、遠くへ行く旅じゃない。実際に出かけられる旅です。
行き方
川越へは3つの路線が通っていて、どこから出るかで選ぶ路線が変わります。
池袋からなら、たいていは東武東上線が速いです。各駅停車は避けて急行や快速に乗り、川越駅か川越市駅で降ります。
新宿からなら、西武新宿線で本川越へ。蔵の町並みにいちばん近い駅です。
大宮のほうから来るなら、JR川越線も使えます。
どの路線もICカードで乗れて、指定席を取らなくても問題ありません。確実に座りたいなら、西武新宿線に西武新宿と本川越を結ぶ全席指定の特急「小江戸」があります。乗車券とは別に特急券が必要です。東武東上線で座席指定ができるのはTJライナーですが、今の時刻表だと池袋発は17時以降、池袋行きは朝だけ。昼間の日帰りにはまず使えません。乗る日の時刻表は、各社の公式サイトで確かめてください。
駅から蔵造りの通りまでは歩いて20分ほど。観光スポットを回る巡回バスに乗ってしまうのも手です。
見どころ

まずは蔵造りの町並み。1893年(明治26年)の大火のあと、商人たちが火に強い造りで建て直した、分厚い壁の建物が続いています。
どっしり見えるのは、実際にどっしり造られているからです。あの土壁は火事から身を守るためのもの。お金を出した商人たちが守りたかったのは商品で、見た目にこだわったわけではありません。
通りから少し入ると、木造の鐘楼「時の鐘」があります。何度か建て直されてきましたが、今も一日に何回か鐘を鳴らしています。
それから菓子屋横丁。昔ながらの駄菓子屋が並ぶ、短い路地です。思いきり観光地ですが、それでも素直に楽しい。特に、あの巨大な麩菓子は一度見ておいてほしいです。
少し南へ歩くと、喜多院があります。ひとつずつ表情の違う五百羅漢の石像が並んでいて、ゆっくり眺めるほど味が出てくる場所です。
食べるもの
川越といえば、さつまいも。チップスにソフトクリーム、お菓子、ビールにまでなっています。
正直、話のタネくらいのものもあります。でも、ちゃんとおいしいものもある。ひとつふたつ試してみるのも、旅のうちです。
もうひとつの名物はうなぎ。川の舟運で栄えた時代から続く味です。安いランチではないので、なんとなく入るより「今日はうなぎ」と決めて行くのがおすすめです。
普通のごはんでいいなら、観光通りの裏に、普通の値段のそば屋やうどん屋があります。通りを二本入るだけで、会計が半分になることもよくあります。
いつ行くか

狙い目は平日の午後です。蔵造りの通りは道が狭く、週末は人でぎっしり埋まります。
閉店が早い店も多く、夕方になると次々に閉まっていきます。16時に着いたら、通りはきれいでも開いている店はほとんどない、なんてことになりがちです。
歩くなら、秋と春が快適です。真夏の蔵造りの通りは熱がこもるうえ、日陰もあまりありません。
川越まつりは毎年10月の第3日曜日とその前日。2026年は10月17日と18日です。大きな山車が同じ通りを練り歩くので、合わせて行く価値は十分あります。そのかわり、とにかく混みます。どっちの川越を見たいか、先に決めておきましょう。
そこで仕事はできる?
まあ、できないと思っておいたほうがいいです。それで構いません。
カフェはあるし、素敵な店もあります。でも、電源があって長居できるような場所ではありません。働く場所を変えに行くのではなく、休みに行く場所だと思ってください。
連絡だけはつくようにしておきたいなら、やることはどこでも同じです。スマホでテザリングして、ノートPCは閉じたまま。急ぎの用件だけ、ベンチに座って返せば十分です。
よくある質問
交通費はどのくらいかかりますか? それほどかかりません。池袋から東武東上線なら片道490円(きっぷ)で、往復約1,000円。西武新宿からは片道600円、往復約1,200円です。西武の特急「小江戸」に乗るなら特急券、東武のTJライナーに乗るなら座席指定券が別にかかります。食事や拝観料を足しても、東京の感覚ならかなり安い半日です。
予約は必要ですか? いりません。このルートの電車はどれもその場で乗れますし、見どころにも予約は不要です。計画が必要なのは、まつりの週末くらいです。
鎌倉や日光に行ったことがあっても行く価値はありますか? あります。まったくタイプが違うからです。鎌倉は寺と海、日光は山と豪華な社寺、川越は商人の町。それに3つのうち、仕事の週にいちばん気軽に差し込めるのが川越です。