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東京から箱根へ:日帰りか一泊か

夕暮れの静かな通りに立つ瓦屋根と紺色の暖簾の古い浴場。屋根から湯気が立ちのぼっている

箱根が日帰りで成立するのは、温泉だけを目的にする場合です。定番の周遊ルート(箱根ゴールデンコース)で芦ノ湖もロープウェイも美術館もとなると、一泊したほうがいい。

判断はここだけ。そして、切符を買う前に決めておく価値があります。

距離は問題ではありません。新宿から特急で約90分。問題は、箱根が「ひとつの場所」ではないことです。

山あいに見どころが散らばっていて、それをつなぐのが、ゆっくりで、景色がよくて、意図的に古風な乗り物の連鎖になっている。

その連鎖こそが箱根の魅力です。同時に、一日をまるごと食べていくのもそれです。

東京からの行き方

いちばん素直なのは、新宿から小田急。ロマンスカーなら箱根湯本まで乗り換えなしの座席指定で、運賃に特急料金が乗る形になります。全席指定で、特急券は乗車日の1か月前の10時から買えます。週末や紅葉の時期は、当日に窓口へ行くより先に押さえておくほうが確実です。

急行と各駅を乗り継ぐ安いルートもあります。小田原で乗り換えるのが一般的で、料金はかなり下がり、時間は40分ほど余計にかかる程度です。

JRパスを持っているなら、東海道新幹線で小田原まで行き、箱根登山線で4駅先の箱根湯本へ、という手もあります。小田原から先はJRではないので、パスは使えず運賃は別にかかります。パスの元が取れているなら、これが実際に速い。

小田急は、新宿からの往復と、エリア内の電車・バス・船・ケーブルカー・ロープウェイの乗り放題をセットにしたフリーパスを売っています。得かどうかは、ルートをどれだけ乗るかで完全に変わります。

湯本で風呂に入って帰るだけなら元は取れません。一周するなら、たいてい取れます。価格も範囲も数年おきに見直されるので、新宿の窓口で確認するのが確実です。この記事を含め、古い情報を信じないほうがいい。

定番の周遊に時間がかかる理由

定番の周遊はこんな順番です。スイッチバックの登山電車で強羅へ、ケーブルカーでさらに上へ、大涌谷の上をロープウェイで越え、芦ノ湖を海賊船で渡り、バスで下りてくる。

一区間ずつは短い。長いのは乗り換えと行列と待ち時間のほうです。

平日の空いている日なら、一周してちょうど一日。紅葉シーズンの週末になると、ロープウェイの待ち時間だけで午後の予定が組み替わります。

箱根はゆっくり移動するように作られています。そこに逆らうと、景色ではなく行列の記憶だけが残ります。

大涌谷の火山ガスの状況によって、ロープウェイは予告なく止まることがあります。そのときは代行バスが出るので旅程自体は成立しますが、出発の朝に運行状況を見ておくといい。

日帰りで十分なとき

目的が「風呂とリセット」なら、日帰りでいい。

箱根湯本は最初の駅で、日帰り温泉が集まっています。新宿を出て2時間後には湯に浸かれます。風呂、昼食、川沿いを少し歩いて、夕方には帰宅。判断することもなく、行列もなく、周遊もない。

この形は本当に良くて、たいてい過小評価されています。仕事が重い時期を抜けた直後なら、フルコースより効きます。

日帰り入浴が初めてなら、作法は日本のほかの風呂と同じです。銭湯とサウナのガイドに基本をまとめてあります。

泊まったほうがいいとき

周遊、彫刻の森、あるいは部屋付き露天のある旅館。これらが目的なら泊まりです。

一泊する理由は、実は時間ではありません。夜が何をくれるか、のほうです。

最終のバスが去ったあと、谷は空になり、気温が落ち、あたりがとても静かになる。その落差に、人はお金を払っている。

箱根の旅館は日本の相場のなかでは高めで、夕食が込みになっていることが多い。山が目当てでサービスは要らないなら、小田原周辺のビジネスホテルのほうがずっと安く上がります。

チェックインが午後遅め、チェックアウトが早めという宿も多いので、前後に仕事を入れるつもりなら組み方に注意してください。

一泊するなら、荷物を持って周遊する必要はありません。箱根登山バスの「箱根キャリーサービス」が、箱根湯本駅構内の窓口で8時30分から12時まで荷物を預かり、宿へ届けてくれます。ただし届け先は提携している宿だけなので、予約のときに宿に聞いておきます。

箱根で働けるか

働けます。ただし期待値は調整しておいてください。

旅館のWi-Fiは当たり外れがあり、谷の中やロープウェイのゴンドラでは電波が落ちます。電源のあるカフェもありますが、数は多くない。

現実的なのは、午前は東京で仕事、昼前後の電車で移動、午後からは山、という形です。芦ノ湖から通話をつなごうとすると、だいたい通話も湖も台無しになります。

どうしてもまとまった作業時間が要るなら、チェーンのカフェや駅ビルがある小田原のほうが、山の上より整っています。

季節

主役は紅葉。標高によりますが、だいたい10月下旬から11月。そのぶん混みます。

冬は過小評価されています。空気が澄んで、晴れの日が多く、湖から富士山が見える確率がいちばん高い。人も少ない。

夏は湿度こそありますが、都心よりはっきり涼しい。8月の東京にいると、それだけで理由になります。

柔軟に動けるなら、ゴールデンウィークと紅葉の週末だけは外したほうがいい。

持っていくもの

小さめのタオル。日帰り温泉ではタオルが有料のことが多いからです。

羽織るもの。新宿と芦ノ湖の気温差は本当にあります。

そして現金。小さな浴場やバスでは、まだ現金のほうが早い場面があります。

荷物は、思っているより少なくていい。乗り換えには階段がついてきます。

よくある質問

箱根は一日で足りますか?

温泉だけなら足ります。ロープウェイと芦ノ湖と美術館まで入れるなら、一日はかなり詰まるので、一泊のほうが楽です。

フリーパスは買うべきですか?

周遊の複数区間に乗るなら買う価値があります。箱根湯本を往復するだけなら、個別に切符を買うほうが安いことがほとんどです。

タトゥーがあっても入れますか?

制限のある施設もまだありますが、受け入れる日帰り温泉や貸切風呂は増えています。部屋付きの風呂を選べば、この問題自体が消えます。

行き先をまだ決めていないなら、箱根は東京発の週末旅5選でも取り上げています。