浅草でリモートワーク、拠点としての実用ガイド
浅草が向いているのは、宿代を抑えたくて、空港へのアクセスを重視していて、観光地の「中」ではなく「脇」で働くことを受け入れられる人です。
場所は台東区、隅田川の西岸。地元の言い方をすれば下町です。
人を呼んでいるのは寺ですが、この街を使いやすくしているのは寺ではありません。
最大の理由は、空港への直通
街の紹介で交通の話は最後に来がちですが、浅草に関しては最初に置くべきだと思います。ほかの街がほとんど持っていないものがあるので。
浅草駅は都営浅草線の駅です。そしてこの路線は、羽田方面の京急とも、成田方面の京成とも相互直通で結ばれています。
つまり、直通電車に乗れば、いま立っているその駅から乗り換えなしでどちらの空港にも行けるということです。ただし、全部の電車が空港まで直通するわけではありません。スーツケースを持って出る前に、乗換アプリで直通の便を確認しておきましょう。
飛行機に乗る頻度が高い人にとって、これは毎回の1時間を静かに消してくれます。山手線での移動も、ラッシュの品川でスーツケースを引きずる時間もいりません。
銀座線の始発駅でもあるので、上野、銀座を通って渋谷まで一本。同じ駅まわりから出ている東武線は日光方面へ向かうので、週末に都外へ出るのも組みやすい。ひとつ注意があります。「浅草駅」は実は複数あって、つくばエクスプレスの浅草駅は銀座線・都営浅草線・東武の駅から離れた場所にあります。宿を決める前に、どの浅草駅に近いのかを確認しておきましょう。
街が人にしてあげられる一番いいことは、毎週していた判断をひとつ消してあげること。
家賃と宿代、そしてその理由
短期から中期の滞在でみると、浅草は東京の西側よりはっきり安いです。ホステル、ゲストハウス、小さなビジネスホテルの密度が渋谷や目黒とは比べものにならず、マンスリー系の選択肢も西側の同等の部屋より下に出ることが多い。
理由のひとつはオフィス街からの距離。もうひとつは建物が全体的に古いことです。
この「古い」は、1か月借りる前に一度考えておく価値があります。壁が薄い、エアコンが古い、そしてネット回線が「2泊の観光客向け」の想定で引かれている、という可能性があります。契約してから気づくのではなく、先に回線を聞いておくほうがいい。
一方で同じ建物事情のおかげで、短期滞在のインフラはとても充実しています。次の部屋までの数日をつなぐには東京でもかなりやりやすいエリアで、その手の選択肢はカプセルホテルとネットカフェの記事にまとめてあります。
働く場所は、少し設計がいる
正直なところ、ここが弱点です。浅草は清澄白河や中目黒のような「カフェで働く街」ではありません。
観光エリアのカフェは、観光の合間の40分を前提につくられています。狭い店内、少ない電源、高い回転率、週末は外に行列。
コワーキングもあるにはありますが、ビジネス街ほどの数はないので、ふらっと行けば席がある前提では動かないほうがいい。
現実的にうまくいくのは3つ。
まず、駅前や大通り沿いのチェーン系カフェ。おしゃれではないけれど、電源とWi-Fiがあって、誰も滞在時間を見ていません。
次に、街の西側。合羽橋や田原町のほうへ歩くと、人の密度が一気に落ちます。寺の前では肩がぶつかるのに、内陸に10分入るとほとんど空いている。
そして蔵前が一駅。浅草にないカフェの密度と静けさが、そこにはあります。安く寝るのは浅草、働くのは蔵前。この組み合わせは実際よく機能します。
朝が、この街のすべて
この記事からひとつだけ持ち帰るとしたら、これです。朝8時前の浅草は、別の街です。
境内は開いていて、ほぼ無人。仲見世はシャッター。川沿いも静か。
団体客はだいたい午前の遅い時間に入ってきて、夕方には引いていきます。早い時間に動けば、気持ちのいいほうの浅草を自分が使って、混んでいるほうを他の人に渡せる。
ヨーロッパや北米と仕事をしていて、そもそも打ち合わせが日本の営業時間の外に入る人には、相性がいい組み方です。
その時間帯に隅田川沿いを走るか歩くかすると、信号のないフラットな道が続いて、対岸にスカイツリーが立っています。
食事と、閉店時間の問題
食べるのは簡単だし、安い。古い食事処、立ち飲み、そばや天ぷら、そして観光とは無関係な裏通りの層が厚い。
問題は時間です。下町の本当にいい店ほど早く閉まります。夜8時や9時で終わる店も珍しくないし、平日にどこか定休日が入っていることも多い。
仕事が遅くまで続くタイプだと、思っていたよりチェーン店とコンビニの登板回数が増えます。夜10時に気づくより、先に織り込んでおくほうが楽です。
西の端の合羽橋も、名前の印象より使えます。長めに滞在するなら、まともな包丁やフライパン、コーヒーの道具をデパート価格を払わずに揃えられる場所です。
向いている人、向いていない人
飛行機によく乗る人、月の固定費を抑えたい人、朝型か時差のある働き方をしている人、そして磨かれた街よりざらつきのある街がいい人には向いています。
逆に、歩いて行ける安定した仕事場が毎日必要な人、夜型の人、渋谷や六本木の夜にすぐ出たい人には、たぶん合いません。
もうひとつ、この街の強みを挙げるなら銭湯です。古い風呂屋の文化がほかの区より残っていて、長く働いた日の終わりに湯に入れるというのは、住む場所を選ぶ理由として十分まっとうだと思います。作法は銭湯とサウナの記事にあります。
よくある質問
浅草は観光地すぎて住みにくいのでは?
混雑はかなり集中しています。浅草寺、仲見世、その周辺の数本の通りは一日の大半が人でいっぱいです。ただしそこから5分から10分、特に西や北へ動けば、普通の住宅街になります。街の評判よりも、どのあたりに部屋を取るかのほうが効きます。
浅草からコワーキングには行きやすい?
蔵前と上野が近く、銀座線で乗り換えなしに都心のオフィス街まで出られます。玄関先にコワーキングがある前提ではなく、短い移動が前提と考えておくのがいいです。
数週間だけの滞在なら拠点としてどう?
向いています。むしろ長期より短期のほうが利点が効きます。安くて融通のきく宿、空港への直通、歩いて回れる下町。どれも滞在の最初から効くものです。コワーキングの少なさは、長く住むほど効いてくる弱点です。