リモートワーカーのための中野ガイド、安くてにぎやかで暮らしやすい拠点
都心に近い場所に住みたい、でも都心の価格は払いたくない。その条件で考えるなら、中野は東京でもかなり強い選択肢です。
中央線快速で新宿から4分。家賃は新宿や中目黒よりはっきり低く、そして街には生活の手触りがあります。ひと月や三ヶ月をそこで働いて過ごすとき、この手触りは思っている以上に効いてきます。
中野は景色のいい街ではありません。神楽坂や谷中のようには写真に映えません。
そのかわりに中野が差し出すのは、摩擦の少なさです。必要なものが徒歩10分以内にそろっていて、しかも価格が抑えられている。浮いた分は、日本の他の場所に使えます。
立地がここまで効く理由
中央線は東京の西側を貫く背骨のような路線で、中野は新宿から西へ出て最初の実質的な停車駅です。
この一点がかなりのことを解決します。新宿に出れば山手線があり、成田エクスプレスがあり、高速バスの多くの路線があります。そこへ乗り換えなしで数分。これだけで、その週にどれだけ思いつきで動けるかが変わります。
東京メトロ東西線も中野が終点なので、コワーキングやクライアントのオフィスが大手町・日本橋側にあるなら、座ったまま一本で行けます。
ノマドにとっていい街は、たいてい美しい街ではありません。何をするにも余計な手間がかからない街です。
覚えておきたいのは、中央線の快速はいくつかの駅を通過するという点です。乗る前に快速か各駅停車かを確認しておくと安心です。平日ラッシュの下り方面はかなり混みますが、中野は路線の始まりに近いので、他の駅では座れないタイミングでも座れることがあります。
実際にどこで働くか
中野は渋谷や大手町のようにコワーキングが密集しているわけではありませんが、必要な分はあります。
駅周辺には独立系のコワーキングがいくつかと、大手ドロップインチェーンの拠点があります。需要が都心ほど高くないぶん、何日も前から予約しなくてもホットデスクを確保しやすい傾向があります。
より大きな資産は、カフェのレイヤーです。
中野には長く続く喫茶店文化があり、その上に新しいスペシャルティのロースターが重なっています。古い喫茶店のなかには、渋谷のチェーンでは考えられないほど静かな店があります。ただ、静かな店ほど通話は周りに響くので、集中作業向きと考えてください。通話は駅近くのコワーキングのフォンブースのように、話してよいと決まっている場所に寄せるのが確実です。
ノートパソコンの可否も店ごとに違うので、腰を据える前に、他の客が画面を開いているかどうかを一度見ておくといいでしょう。
中野の中央図書館や区の施設も、集中して黙々と進めたいときの選択肢になります。東京の公共図書館は基本的に通話ができませんが、執筆やコードのような一人作業なら十分すぎるほどで、しかも無料です。
時間帯を選ばず安定した回線がほしいときは、駅近くのネットカフェが24時間開いていて、ブースとデスクとドリンク飲み放題がついてきます。都の条例で本人確認が必要なので、パスポートを持っていきましょう。一般的なブースは天井が開いているので、通話ではなく作業向きです。
商店街が毎日効いてくる
中野サンモールは駅の北口からまっすぐ伸びていて、端から端までアーケードに覆われています。つまり、夕食までの道のりが天気に左右されません。
些細なことに聞こえますが、東京の梅雨をひと月過ごすと印象が変わります。
商店街には生活の実用レイヤーが詰まっています。ドラッグストア、100円ショップ、安い食堂、パン屋、少し歩けばスーパー、そして毎晩違う店に入っても何週間ももつ数の小さな居酒屋。
この一帯の価格は、新宿で同じものを買うより低めに収まる傾向があります。ただし店によって差はありますし、近年その差は少しずつ縮んでいます。
商店街を抜けた先にあるのが中野ブロードウェイ。この街を国際的に有名にした複合ビルです。
理解の仕方としては、専門店が縦に積み上がった迷路と考えるのがいちばん近いと思います。ヴィンテージの漫画、中古の腕時計、フィギュア、中古カメラ、小さなギャラリー。
そのどれにも興味がなくても、頭が仕事に使えなくなった夕方に1時間ぶらつく場所として、素直に面白い建物です。
ひと月以上住むということ
駅の北側と西側の住宅街は低層で静かで、小さなアパートが並んでいます。
価値が見えるのはこのあたりです。中野の家具付きマンスリーやシェアハウスは、新宿・渋谷・中目黒の同等物件より低い価格帯に収まることが多く、それでいて実用的な通勤圏の内側にあります。
中野区は人口密度が高く、若い層が多い街です。学生と単身世帯の比率が高く、それが街のかたちを決めています。小さな部屋が多く、食事が安く、遅くまで開いている店があり、コインランドリーがどのブロックにもあります。
同時に、六本木や広尾に比べれば英語は通じにくい街です。日常のやり取りで困ることはあまりありませんが、そういう街だと思っておくのがいいでしょう。
食材は、商店街のスーパーと、少し歩いた先にある大型店を組み合わせる形になります。深夜のコンビニ網は十分です。
正直なトレードオフをひとつ。中野は場所によってはうるさい街です。とくに駅の周辺と、近くの飲み屋の並ぶ路地。音に敏感なら、アーケードの真上ではなく、数本入った通りの物件を見たほうがいいと思います。
街の外へ出る
中野は、出発点としてよく機能します。
中央線は西へ、高円寺・阿佐ヶ谷・吉祥寺と続いていきます。一本の路線から降りずに、性格の違う街をいくつも歩いて回れます。
吉祥寺と井の頭公園は、気軽な午後の行き先として十分に近い距離です。ひと駅隣の高円寺には、中野にはあまりないライブハウスと古着の文化があります。
ひとつ注意を。土日祝日は、中央線快速が高円寺・阿佐ヶ谷・西荻窪に止まりません。週末にこの3駅へ行くときは、黄色い電車の総武線各駅停車に乗ってください。
反対方向に出ればすぐ新宿で、そこから先はご存じのとおりです。
駅の西側にある中野セントラルパークは、再開発でできた芝生とオフィスタワーの区画です。美しい公園ではありませんが、ちゃんとした公園ではあります。駅のホーム以外に、コーヒーを持って外に座れる場所があるというのは、それなりに大きなことです。
中野が向いている人
中野が合うのは、はっきりしたタイプのリモートワーカーです。雰囲気よりもアクセスとコストを重視する人。朝の散歩に景色を求めない人。街には写真映えより機能を求める人。
東京に静かで低層でゆっくりした顔を求めるなら、蔵前や谷中のほうが向いています。
クリエイティブで少し雑然とした空気がほしいなら、高円寺か下北沢でしょう。
でも、何をするにも4分の距離にいたくて、安くおいしく食べたくて、日本の残りをどう回るか考えるあいだ月々のコストを抑えておきたいのなら、中野を上回る選択肢はなかなかありません。
拠点をどこにするかまだ決めかねているなら、中野を他の候補と並べて見てみるのが早いです。東京のエリア比較で、7エリアを費用・交通・ワークスペースの軸で整理しています。
よくある質問
日本語が話せなくても中野は住みやすいですか。
暮らせますが、英語に特別やさしい街ではありません。多くの店や飲食店は日本語中心で、英語メニューがあるほうが例外です。翻訳アプリで日常の隙間は埋まりますし、外国人住民に慣れた街でもありますが、都心や外国人の多いエリアより英語表記は少ないと考えておくのが現実的です。
新宿や渋谷と比べて価格はどのくらい違いますか。
家賃も日々の出費もおおむね低めですが、どの程度低いかは建物、駅からの距離、時期によって変わります。中野の知名度が上がるにつれて差は縮まってきているので、ネットで見かける具体的な金額は固定のレートではなく、自分で探すときの出発点として扱うのがいいと思います。
ビデオ会議ができる静かな場所は見つかりますか。
見つかりますが、多少の下見は必要です。駅周辺のコワーキングにはブースがありますし、ネットカフェには時間単位で使える鍵付き個室がある店もあります。ただし通話のルールは店ごとに違うので、先に確かめてください。カフェは店によりけりで、図書館は通話に使えません。長く滞在する人の多くは、毎回その場で探すのではなく、信頼できる場所を1、2ヶ所決めて回しています。