東京から米国・欧州の時間で働く、生活を犠牲にしない一日の作り方
最初に正直に書いておきます。東京はほとんど何をするにもすばらしい拠点ですが、南北アメリカの人とリアルタイムで働く時間を合わせるのだけは苦手です。
日本標準時は米国本土より13〜17時間進んでいます(東海岸とは13〜14時間、西海岸とは16〜17時間)。英国とは8〜9時間、ドイツやフランスなど大陸の西欧の多くとは7〜8時間の差です。クライアントや同僚がこうした地域にいると、会議がどんどん夜に入り込んできます。
ここで長く続いているノマドは、特別に意志が強いわけではありません。時差に合わせた一日の形を最初に作っているから、毎週時差と格闘せずに済んでいるんです。
決める前に、実際の時差を把握する
「日本のほうが進んでいる」というぼんやりした感覚ではなく、具体的な数字を頭に入れておきましょう。日本はサマータイムがないので、ほかの地域が時計を切り替えるたびに、年に2回、時差が1時間ずれます。
ざっくり言うと、東京が午前9時のとき、ロンドンは深夜ごろ、米国東海岸は前日の午後7時か8時です。東京が午後10時なら、ロンドンは昼過ぎ、ニューヨークは午前8時か9時で、ちょうど仕事が始まるころです。
大変さも、その解決策も、ほとんどはこの事実から来ています。欧州とリアルタイムで話せるのはこちらの夜遅く。米国東海岸となると、早朝か深夜になります。
米国と欧州は時計を切り替える日が違うので、時差は一年のうちに四段階で変わります。東京がどれだけ進んでいるかは次のとおりです。
| 期間 | ニューヨーク | サンフランシスコ | ロンドン | パリ・ベルリン |
|---|---|---|---|---|
| 11月第1日曜〜3月第2日曜 | 14時間 | 17時間 | 9時間 | 8時間 |
| 3月第2日曜〜3月最終日曜 | 13時間 | 16時間 | 9時間 | 8時間 |
| 3月最終日曜〜10月最終日曜 | 13時間 | 16時間 | 8時間 | 7時間 |
| 10月最終日曜〜11月第1日曜 | 13時間 | 16時間 | 9時間 | 8時間 |
うっかりしやすいのは、あいだにはさまる短い二つの期間です。ニューヨークとロンドンの両方が参加する定例会議は、片方の時間だけが動いてしまいます。次の切り替えは、欧州が2026年10月25日、米国が2026年11月1日、その次は米国が2027年3月14日、欧州が2027年3月28日です。
ずれるのは一日の時間だけではありません。週の形もずれます。東京の月曜の朝は、米国ではまだ日曜の夜。米国の同僚から返事が来はじめるのは、東京の月曜の夜からです。逆に、ニューヨークの金曜午後5時は東京の土曜午前6時か7時、サンフランシスコの金曜午後5時は土曜午前9時か10時にあたります。気をつけていないと、米国の金曜の午後が、こちらの金曜の夜と土曜の朝をじわじわ食っていきます。その時間に届いた連絡に返すかどうかは、先に決めておきましょう。
時差そのものは動かせません。選べるのは、一日のどちらの端を、どれだけ相手に渡すかです。
勤務パターンを一つ決めて守る
東京からアメリカや欧州の時間に合わせて働く人は、たいてい三つのリズムのどれかに落ち着きます。困ったことになるのは、たいてい、どれにするか決めないまま三つのあいだをふらふらしているときです。
一つ目は、一日を二つに分けるやり方です。東京の午前から昼過ぎまでは集中してひとりの作業を進め、しっかり休んでから、夕方以降に数時間、欧州の昼間や米国の朝早い時間の相手と通話します。
明るい時間は自分のために使えて、会議はひとかたまりにまとめられます。
二つ目は、早朝シフトです。夜明け前に起きて、東京時間の午前6時から9時ごろに米国との通話をこなします。これは米国西海岸の午後にあたります。東海岸はもう冬なら午後4〜7時、夏なら午後5〜8時なので、つかまえられるのは向こうの一日の終わりのほうだけです。そのあとは、一日まるごと自分の時間です。
最初の一週間はきついですが、慣れてしまえばけっこう快適です。東京の朝は穏やかで、午後が本当に自由になるからです。
三つ目は、非同期を基本にするやり方です。リアルタイムで重なる時間はほとんど持たず、東京の普通の昼間に働いて、できるだけ文章での報告、録画した動画、わかりやすいドキュメントでやりとりします。
いちばん長続きするのはこれです。仕事の内容が許すなら、チームにこの働き方を提案してみる価値があります。
どれが正解、というものはありません。大事なのは、ひとつを自分で選んで、その時間帯の外側を守ることです。そうしないと、月曜は午前7時、火曜は午後11時と通話を受けているうちに、どの時間も相手次第になってしまいます。
非同期のやりとりを基本にする
東京の時差は、非同期で働くことを主張するのにこれ以上ない理由になります。上司やクライアントには、ぜひそう伝えておきましょう。丁寧に書いたメッセージ、短い録画の説明、ちゃんと最新の状態に保たれている共有ドキュメント。これがあれば、本来なら夜に入るはずだった会議のほとんどはなくせます。
どうしてもリアルタイムで話す必要があるときは、「いつでもどうぞ」ではなく、具体的な時間枠をこちらから出してください。8時間や13時間離れた相手に任せておくと、予定はかならずこちらのいちばんつらい時間に入ってきます。
効いてくる習慣もいくつかあります。まず、東京での一日の終わりに、わかりやすい引き継ぎを書いて残すこと。そうすれば、こちらが寝ているあいだにアメリカ側が続きを進められます。
次に、チームで使っているツールに、自分の状態と仕事をしている時間を表示しておくこと。誰かがうっかり真夜中に予定を入れるのを防げます。それから、録画した報告を、会議の代わりのおまけではなく、ちゃんとした成果物として扱うこと。
あちこちに散らばったチームでは、慌ただしい通話より、録画のほうがよほど多くを伝えられることがよくあります。
睡眠を、仕事の一部として守る
東京でつぶれる人の原因は、わかりやすい意味での働きすぎではありません。睡眠が細切れになることです。
夜遅くに通話をひとつ、次は早朝に通話をひとつ、そのあいだに普通の昼間の仕事。これだと、寝た時間の合計は足りていても、体はくたくたです。早朝シフトにするなら、遠慮せず早く寝ましょう。
夜遅くの通話がある分割型にするなら、翌朝9時から始めたくなる気持ちはぐっとこらえてください。一日のどちらの端を相手に渡すにしても、もう片方は絶対に守る。そして週に少なくとも何日かは、夜にリアルタイムの通話をいっさい入れない日を作って、体をしっかりリセットさせてあげてください。
空いた午後に東京を楽しむ
この時差には、見落としがちなうれしい面もあります。リアルタイムで働く時間が早朝か夜遅くなら、世界の多くがオフラインのあいだ、東京の午後はまるごと空きます。
そしてその時間帯こそ、東京がいちばん気持ちいいんです。平日の午後の美術館は静かで、カフェには席があり、電車はすいていて、公園はほとんど貸し切りです。
ここで働くリモートワーカーの多くが、この変わったスケジュールのおかげで、普通の九時五時よりずっとたくさん東京を楽しめていると感じています。コツは、空いた時間をどうでもいい雑務で埋めずに、ちゃんと使うことです。
よくある質問
東京はサマータイムで時計を変えますか。 いいえ。
日本にはサマータイムがないので、サマータイムのある地域が時計を切り替えると、時差が1時間ずれます。欧州と北米が切り替える3月ごろと、10月下旬から11月初めごろに、そのときの時差を確認してください。
米国東海岸の時間で、長期的に東京から働けますか。 実際にそうしている人はたくさんいます。
たいていは、ニューヨークの始業にあたる東京の夜10〜11時以降と夜明け前に通話をこなし、朝はゆっくり寝て、東京の午後を空けておく形です。睡眠を守れて、東京の普通の昼間までオンラインでいるよう求められないなら、長く続けられます。
最も役に立つ一つの変化は何ですか。 できるだけ非同期で働き、わかりやすい文章で引き継ぐようにすることです。
そのうえで、リアルタイムで話す時間は、夜じゅうにばらばらに入れるのではなく、守ると決めた少しの時間枠にしぼりましょう。