AIドリブンで、どこからでも会社を回す
国を移動しながらノートPCひとつで事業をしている、と話すと、たいてい「全部ひとりでやっているんですね」と言われます。そうではないんです。
一緒に働く人も、頼りにしている人もいます。本当のところは、あえて少人数にしていて、それで回っているのはAIを前提に仕事を組んでいるからです。
AIがてこになってくれるから、小さなチームでも体の大きさ以上の仕事ができる。スーツケースひとつで事業を回せているのは、ほぼこれのおかげです。
長いあいだ、わたしは「どこでも働ける」というのは段取りの問題だと思っていました。Wi-Fiを確保して、ビザを取って、時差を合わせる。
どれも大事です。でも、いちばん大変なのはそこではありませんでした。身軽で少人数だと、困ったときに「時間を足す」「人を増やす」で力押しできないんです。
大きくて腰を据えたチームより、一人あたり、一時間あたりでたくさんの仕事をこなすしかない。そうなって初めて、AIを前提に仕事を組むことが流行りの言葉ではなく、毎日の仕事の回し方そのものになります。
少人数は、我慢するしかない弱点ではありません。AIと組めば、それが身軽に動ける理由になります。
わたしが実際にAIに渡していること
いま考えるのは「AIにこれができるか」ではありません。「何をAIに任せれば、人は人にしかできないことに集中できるか」です。実際には、以前ならいつの間にか一日がつぶれていたような作業を、AIに回しています。
ほとんどすべての下書き。散らかったメモを整理して形にすること。調べものと要約。仕事で使う言語どうしの翻訳。それから、誰も起きていない時間に判断を詰めたいとき、いくらでも付き合ってくれる考えごとの相棒。
どれも、人をいらなくするものではありません。なくなるのは、真っ白な画面と、なかなかエンジンがかからない時間と、思いついてから手ごたえのある形になるまでの地道な作業です。
機械的な7割が数分で片づけば、本当にわたしが必要な3割に頭を使えます。判断すること、良し悪しを見極めること、人との関係、本当のリスクを背負う決断。
時間の使いどころがそこに移る。いちばん大きいのはそこです。
わたしの朝は、夜のうちに動いた仕事の確認から
使っているツールはひとつではありません。ChatGPT、Claude、Gemini を、仕事に合わせて使い分けています。
AIエージェントは、たいてい同時に5つ以上動かしています。決まった作業は自動化の仕組みにして、時間が来たら勝手に動くように組んであります。気づけば、その仕組みもかなりの数になりました。
だから朝起きたら、まずラップトップを開いて、スケジュールしておいたタスクがちゃんと動いたかを確かめます。問題なく終わっていれば、そのまま一日を始める。わたしの一日は、だいたいここから始まります。
なぜノマド生活と特に相性がいいか
AIを前提にした働き方と、場所に縛られない暮らしは、実際にやってみると、思っていた以上にお互いを支え合っています。
時差をまたいで暮らしていると、どうしても「死んだ時間」ができます。一緒に働く人たちが寝ているあいだ、自分だけ起きて働いている時間です。
以前は、返事を待つだけの空白でした。いまは、いちばんはかどる時間のひとつになっています。
いつでも一緒に手を動かせる、頼れる相手がいるからです。ある国の朝6時に仕事を進めておいて、別の国で一日を始める人たちに、仕上がったものを渡せる。
時差がじゃまにならなくなって、リレーのバトンのようにつながっていくんです。
チームを身軽なままにしておけるのも大きいです。大人数の固定メンバーと大きなオフィスが必要で、全員が同じ部屋にいないと回らない事業は、わたしについて来られません。
AIを前提に少人数で組んだ事業なら、ついて来られます。たまたまではなく、そうなるように作りました。
目指していたのは、人をAIに置き換えることではありません。動ける小ささのまま、ずっと大きな組織に負けない仕事を届けることです。
AIに任せきれないこと
何の苦労もないように書いたら、うそになります。AIは仕事をものすごく速くしてくれますが、最後の判断を任せられる相手ではありません。
下書きはAI。決めるのはわたし。
自信満々に間違えることも少なくないので、お客さま向けのものや大事なものは、必ず人が、たいていはわたしが目を通します。AIは、信頼を築くことも、関係を続けることも、責任を取ることもしません。
でも、事業を支えているのはまさにそこです。ベテランの担当者のつもりで任せきりにすると、痛い目にあいます。
これまでで一番速くて、一番辛抱強いアシスタントだと思って使えば、小さなチームにできることががらりと変わります。
もうひとつ、正直に言っておくと、これはわたし抜きで勝手に回る機械ではありません。
てこはてこで、誰かが手をかけていないと動きません。何をつくるか、誰に届けるか、どこで線を引くか。その判断は人に残ります。
その部分を守る時間をつくってくれたことこそ、AIを使ういちばんの意味だと思っています。
リモートワーカーへ
これは経営者でなくても使える考え方です。リモートで働いているなら、同じことができます。
仕事のうち機械的な部分はAIに任せて、自分の時間は、本当に自分がやるべき部分に回す。まずは、いちばん気が重いタスクの下書きを、ツールに渡してみるところからどうぞ。
楽をするのが目的ではありません。限られていて、どこへでも持ち運べる自分の集中力を、自分にしかできないことに使うためです。
東京でも、どこにいても。
わたしが本気でおすすめしたい「場所に縛られない働き方」は、こういうものです。全部を自分で抱えこむのでもなく、全部を機械に丸投げするのでもない。身軽に動けて、ちゃんと意味のある仕事ができる形をつくることです。